印文硬陶瓿
いんもんこうとうほう
概要
広口、短頚、平底で、肩部が横に張った壺形の土器・瓿である。素地は灰色で硬く焼きしめられている。外面の肩部以下には四角の範囲内に6本の縦線と、その上縁に2本の横線からなる叩き目がびっしりと付けられ、内面には当て具を当てて成形したときの凹みが連続して残る。口唇部は平坦で厚みがある。
中国の南方から東南アジアにかけての一帯では、土器を叩き技法によって作る伝統が新石器時代からあった。とくに浙江省と江蘇省南部では、後漢時代になると瓿(罍)という壺型の硬陶に方格を基調とする叩き目を付けて成形したものが流行した。本作はその好例であり、後漢時代の土器製作の多様な地域性をよく示すものである。また、浙江省上虞の窯跡からは、本作と似た叩き目をもつ陶片で青磁釉のかかったものが採集されている。青磁の成立と関連する可能性があり、注目される。