緑釉罐
りょくゆうかん
概要
平底から外反しながら器壁が立ち上がり、最大径をもつ肩部に至る。肩部から口縁部にかけて急激に窄まり、口唇部が突出する。肩部に2本1組の凹線がめぐる。口唇部の随所に釉が滴る途中で固まった痕跡が見られることから、施釉時には身を倒置していたことが知られる。底部には窯道具のトチンの痕跡がある。
中国の漢時代には彩色文様を施した加彩土器のほかに、鉛を触媒とした緑釉陶・褐釉陶でも墓への副葬に特化した器物「明器」が盛んに作られた。「罐」とは酒や食料などの容器として使用された頸部のない壺のことであり、漢時代には灰陶でよく作られた。緑釉陶の本作は実用品ではなく、ほかの器種の明器とともに冥福を祈って墓に副葬された。緑釉陶の器種のなかで罐は比較的少なく、漢時代の明器の多様性を示す貴重な例である。