緑釉耳杯
りょくゆうじはい
概要
平面が楕円形の漆塗り耳杯を象った緑釉陶器である。長手の両側に把手がつく。把手の輪郭は細長い弧状を呈する。把手がひとの顔の両耳に見えることから、耳杯と呼ばれる。
中国では多彩な器物のミニチュア模型「明器」がやきもので象られ、死者のあの世での幸福を祈って墓に副葬された。明器のなかでも漆器の耳杯をかたどった緑釉陶は、前漢後期から後漢時代を通じて盛んに作られた。本作はその代表的な作例である。
漢時代の酒宴において、酒は温酒樽や酒樽といった比較的大きな容器に入れられており、都度、耳杯に注いでから主客に供した。酒のほかにも羹を盛ることもあった。当時の宴席における飲食に欠かせない、もっとも必要とされた容器のひとつであった。