金銅火焔宝珠形舎利容器
こんどうかえんほうじゅがたしゃりようき
概要
舎利(しゃり)とは仏教の用語で遺体や遺骨を意味し、多くの場合、仏教を始めた釈迦の遺骨、仏舎利(ぶっしゃり)のことを指します。インドでは釈迦の聖なる遺物として舎利を信仰しましたが、この信仰は日本にも伝わり、水晶(すいしょう)や瑪瑙(めのう)などの宝石の小さな粒を舎利になぞらえて容器に納め、礼拝することがさかんに行われました。
これは舎利を収める容器です。それぞれのパーツを銅の鋳造で作って金メッキし、組み合わせてできています。上の部分は火炎宝珠といい、火炎をまとった宝の珠(たま)を表しています。この宝珠はてっぺんの部分が蓋(ふた)になっており、開けると中は空洞で、容器の役割をはたします。実は鎌倉時代13世紀以降の舎利容器は、こうした火炎宝珠形がもっとも多いのですが、この作品では宝珠から下の部分に、きわめて特殊なデザインが採用されています。四角形の基壇の上に、密教の儀式で使われる、五鈷杵(ごこしょ)とよばれるシャープな形の法具を立て、あたかも密教法具(みっきょうほうぐ)が舎利容器を支えるかのような構成をとっているのです。こうした特徴から、密教における舎利礼拝の儀式で安置されたと考えられます。