毘沙門天立像
びしゃもんてんりゅうぞう
概要
像とともに伝わった旧厨子扉(ずしとびら)の墨書により、京都・石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)の宝塔院(別名琴塔(こととう))内に安置されていた像と知られる。同院は明治初年の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)のおりに社外に売却された。右肘を強く張ったポーズは運慶作の静岡・願成就院(がんじょうじゅいん)の毘沙門天像を想起させ、力強い作風からも慶派の流れをくむ仏師の作と考えられる。彩色については、金泥彩(きんでいさい)を多用することや、截金(きりかね)は補助的にのみ用いること、文様のモチーフは幾何学文よりも雲龍・鳳凰・花葉など具象的なものが多いことが特徴である。兜(かぶと)の錣(しころ)は別材製のものを鎖で吊っている。
なら仏像館 名品図録. 奈良国立博物館, 2010, p.109, no.142.