徳島県若杉山辰砂採掘遺跡出土石器
とくしまけんしんしゃさいくついせきしゅつどせっき
概要
若杉山辰砂採掘遺跡は、水銀朱の原料となる辰砂の採掘遺跡であり、弥生時代後期初頭から古墳時代前期初頭に機能した。本一括は、辰砂原石の採掘および精製に使用された石杵、石臼124点で構成され、附として土器残欠や、辰砂鉱石などが加わる。
敲打痕や擦痕が顕著に観察される石杵は大きさや形状も様々で、石臼には径10cm前後、深さ2cmほどの窪みが多数認められる。すなわち、辰砂鉱石の採掘のみならず、現地にて岩塊を粉末化するまでの敲き、潰し、磨りといった精製作業を行っていたことを示す。また石杵の多くは地元で採集される砂岩礫であるが、香川県東部産の玢岩礫が一定数あり、採掘に適した石材の選択、および約40km離れた地からの運搬行為を示すものとして注目される。
これらの石器は、辰砂の採掘と精製過程を具体的に復元しうるものであり、弥生時代から古墳時代初頭における水銀朱の生産の実態を示し、学術的価値が高い。