愛媛県松山市三津にあった泉回漕店の引札。左側に「回漕店並ニ諸問屋伊予三津栄町泉喜七郎」とある。中央に大きく描かれているのは、泉回漕店の店構えそのもの。屋根には三つ輪の屋号が入った旗が立ち、店先には「汽船直扱泉喜七」と書かれた看板が掛かっている。看板の下には三津港から荷揚げされた荷物が積み上げられ、店内に荷物を運びこむ店員の姿がある。木造2階建ての大きな建物は多くの小部屋に分かれ、くつろぐ旅客の姿も見える。店先に吊られた洋灯、店に駆け込む制服姿の郵便配達、街路を進む人力車などからは、明治という新しい時代の息吹が感じられる。港に面した屋根の上には遠見台がつくられ、そこからは瀬戸内海の島々や行き交う汽船などを眺めることができた。特注品と思われるこの引札からは、瀬戸内海運で繁栄した回漕店の賑わいが伝わってくる。