中寺廃寺跡
なかでらはいじあと
概要
中寺廃寺跡は平安時代の山林(山岳)寺院跡で、香川県のほぼ中央の南端、標高1000m級の讃岐山脈の主稜線から少し下った標高600から700mの山深い山中に立地する。廃寺跡は尾根斜面の三箇所に主要な施設が配置されている。全体の範囲は東西400m、南北600m。最も高いところの上下二段の平坦面に方位に合わせた南面する仏堂と塔が配され、寺院の中心部となる。建物中央にある塔心礎の可能性もある石の下からは、須恵器壺5個体と土師器甕1個体が埋納された状態で出土した。地鎮・鎮壇具と考えられる。東側には尾根を基壇状に造成して桁行5間、梁行3間の南北棟の仏堂を配し、その南斜面に掘立柱建物数棟がある。西播磨産須恵器多口瓶や越州窯青磁碗が出土しており注目される。南側には平面形がほぼ方形を呈する石組遺構16基が確認されている。供養仏塔などの可能性も考えられる。廃寺跡の時期は出土遺物から10世紀から11世紀が中心的な時期と考えられる。
古代寺院は、平地に立地するものが一般的であったが、平安時代になると、比叡山延暦寺や高野山金剛峯寺などを営んだように山林(山岳)寺院が造営されたが、中寺廃寺跡などからみると、山林寺院の展開は地方においても広くみられたものと考えられる。平安仏教の地方における展開を考えるうえで重要である。