千手観音懸仏残欠
せんじゅかんのんかけぼとけざんけつ
概要
懸仏(かけぼとけ)の尊像部分が遺ったもの。十一面四十臂(ひ)の千手観音(せんじゅかんのん)を表す。頭体部から台座までを一鋳(いっちゅう)し、小手は枘(ほぞ)で留めつける。小手は6本ずつ組になった部材を左右とも三重に重ね、総計36本を数える。大手は胸前で合掌(がっしょう)し、また腹前に宝鉢(ほうはつ)を戴いている。小像ではあるが、頭部斜め後ろにまで毛筋を刻む頭髪の表現や、微妙な起伏を持たせた面部の表現、小手中に拳を握るものや第一指と第三・四指を捻ずるものを交える表現に顕著なように細部まで丁寧に作られており、堂々たる風格を示している。やや形式化がみられることから制作は14世紀に入る頃と推測される。
古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.24, no.9.