地蔵菩薩懸仏残欠
じぞうぼさつかけぼとけざんけつ
概要
懸仏(かけぼとけ)の尊像部分のみが遺ったもの。頭体部及び蓮肉(れんにく)までを一鋳(いっちゅう)し、別造の蓮弁(れんべん)を取りつける。なお、左手先も別造である。両手先に小孔があり、右手に錫杖(しゃくじょう)、左手に宝珠(ほうじゅ)を持する地蔵菩薩(じぞうぼさつ)を表していたと推測される。地蔵菩薩は、春日(かすが)三宮、日吉山王(ひえさんのう)上七社十禅師(じゅうぜんじ)、熊野禅師宮(くまのぜんじのみや)等の本地仏(ほんじぶつ)であり、本品の制作背景は明らかにできないものの、しかるべき社に奉献されたものと考えられる。本品は、別造の蓮弁を台座に差し込む点や端正な像容から、13世紀後半頃の制作と考えられる。残欠ではあるが、高い造形性を示す優品である。
古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.22, no.7.