十一面観音懸仏
じゅういちめんかんのんかけぼとけ
概要
十一面観音(じゅういちめんかんのん)を表した懸仏(かけぼとけ)。鐶(かん)まで含めて一鋳(いっちゅう)され、尊像も陽鋳(ようちゅう)で表される。身光内部にはV字状の線刻が施され、華瓶(けびょう)を表すものかと想像される。また周縁部にも線刻で短い線を重ねている。銅板に陽鋳で尊像を表す例は、金峯山(きんぷせん)山頂や大峯(おおみね)山頂遺跡より出土した鋳出蔵王権現像(ちゅうしゅつざおうごんげんぞう)(奈良・大峯山寺蔵)など数例が知られるが、類例が乏しく希少性の高い遺例といえる。なお、鉄製で尊像を陽鋳するものに応永3年(1396)の銘を有する石川・個人蔵五社大明神懸仏(ごしゃだいみょうじんかけぼとけ)があるが、地域性の強いものとの見解があり、本品との直接的な関係は認めがたい。
古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.26, no.11.