男神鏡像
だんしんきょうぞう
概要
円形の銅板の中心をやや高く打ち出し、男神(だんしん)一柱を蹴彫(けりぼり)で表した鏡像(きょうぞう)。表面には鍍金(ときん)が施される。男神は束帯(そくたい)姿で冠を戴く姿に表され、袖中して胸前に笏(しゃく)を執り、床台に正面向きに趺坐(ふざ)する。後方には鳥居形の背屏が立つが、これは垂迹神像(すいじゃくしんぞう)を鏡像・懸仏(かけぼとけ)に表す際にしばしば行われる表現である。本品は、鏡面に尊像を線刻する点では鏡像の範疇(はんちゅう)で捉えられるものであるが、表面に槌起(ついき)が施されており、鏡像から懸仏への過渡期的様相を示す点で注目される。残念ながらいずれの祭神を表すものかは定かでないが、13世紀を降らない時期の垂迹神を表す鏡像の遺例として注目される。
古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.20, no.5.