金銅羯磨
こんどうかつま
概要
轂(こく)は十六弁の菊花形で、中央に薄い凸レンズ状の花心を表す。花心の周囲に一重の圈線を巡らしている。蓮弁は間弁付きの四弁花で、内側に輪郭を刻んでいる。しべは縦筋をたがねで刻んでいる。脇鈷(わきこ)は嘴形(くちばしがた)を表し、稜線に樋(ひ)を刻んでいる。脇鈷は鎌倉後期に顕著ないわゆる牛角形ではなく、全体に緩やかな弧を描いて湾曲しており、形骸化は認められない。また、轂に対して鈷部が大きめである点は、京都・東寺所蔵の金銅羯磨(こんどうかつま)(平安時代後期)や京都・東福寺所蔵の金銅羯磨(鎌倉時代)にも通じ、古式な要素と言うことができよう。全体にバランスの整った造形を見せており、製作年代は鎌倉時代(13世紀)に置くことが可能であろう。
古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.52, no.32.