力士形立像
りきしぎょうりゅうぞう
概要
金剛力士は仏敵を威圧する武神だが、髭を蓄えた諧謔味(かいぎゃくみ)のある風貌と、独特の誇張的な身振りを備えた本像は、親しみやすく剽軽(ひょうきん)な印象を与える。天衣(てんね)・腕釧(わんせん)・首飾りをつけるほかは上半身が裸体で、右手をおろして拳を握り、左手は曲げて胸前に挙げ、五指を伸ばすポーズをとる。奈良時代に盛行した脱活乾漆(だっかつかんしつ)技法で制作され、冠の紐や天衣などの芯として用いられた銅線が露(あら)わになっている。写実的な筋骨の表現は8世紀の彫刻の特徴を示すが、類例のない個性的な作風をもつため、制作地については検討の余地がある。
なら仏像館 名品図録. 奈良国立博物館, 2010, p.123, no.167.