観音菩薩立像
かんのんぼさつりゅうぞう
概要
本体と蓮肉を蝋型原型から一鋳とし、鏨で仕上げたもので、垂下した左手に水瓶を執り、右手は屈臂楊掌する上代の観音像にしばしばみられる形勢をとる。菩薩通有の胸飾や瓔珞、腕釧などでにぎやかに飾られ、天衣が湾曲線を描いて膝前に懸かる処理や、足もとを蔽う裳裾の扱いなども、奈良法輪寺の伝虚空蔵菩薩像など奈良前期菩薩像に共通する特色を示している。一方、体側に垂下する天衣が鰭状に拡がり、体に添って正面向きにあらわす形式は、飛鳥時代の余風を残すもので、眉と上瞼、上と下の瞼の間を段階的に刻み、また、鼻梁から頬への傾斜を直裁に刻む彫法も、辛亥年(白雉2年・651)銘の旧法隆寺献納宝物の銅造観音菩薩立像(東京国立博物館蔵)などと通ずるところがある。7世紀後半、新旧様式の混淆する奈良前期の一作とみなされる。なお、本像は右手首から先は後補で、本体も後補の蓮華座に挿し込んで立てられている。
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