観音菩薩立像
かんのんぼさつりゅうぞう
概要
やや頭部が過大な、重厚感に富む観音像。右手で宝珠(ほうじゅ)をつまみ、左手は第一・第二指で瓔珞(ようらく)をはさむ。裳(も)の折り返しが三角形を呈する点、天衣(てんね)が蓮肉(れんにく)上でねじれて垂下する点、裳が両足を覆って縁がめくれあがり、指だけが露出する点などが滋賀・慈眼寺(じげんじ)像および福島・福聚寺(ふくじゅじ)像と共通し、何らかの権威ある像に基づいて、形式の反復が行われた可能性を想定できる。頭頂から台座に至るまで一鋳するが、台座部分は一度で完成せず、鋳掛(いか)けを行っている。像内には、鉄心と中型土(なかごつち)が残される。香川県三豊市の伊舎那院(いしゃないん)伝来という。
なら仏像館 名品図録. 奈良国立博物館, 2010, p.120, no.160.