川岸で音楽を楽しむ女たち
かわぎしでおんがくをたのしむおんなたち
概要
インドでは、インド神話や、シヴァ神、ヴィシュヌ神などのヒンドゥー教の神々、王の肖像や歴史的なエピソード、男女の恋愛などさまざまなテーマを緻密なタッチと鮮やかな色彩で描いた、細密画とよばれる絵画のジャンルが発達しました。多民族国家であるインドでは、細密画の表現も地域によってさまざまで、それがまた魅力であるともいえます。
この絵の流派の名前であるムルシダーバードは、インド東部の西ベンガル州中央部に位置する都市です。この地はかつてムガル帝国のベンガル地方長官が、のちにムルシダーバード地方長官が管轄したことから、ベンガル地方の中心地として繁栄し、細密画も独自のスタイルを展開するようになりました。
この作品は川の両岸で女たちがそれぞれ楽器を演奏するなど、音楽に興じている場面を描いたものですが、遠近法による空間表現、曲がりくねった河川の形、赤褐色に塗られた地面、黄色と緑色で表現した樹木などに、18世紀半ばのムルシダーバード派の特徴を認めることができます。