アクバル帝胸像
ていきょうぞう
概要
インドでは、インド神話や、シヴァ神、ヴィシュヌ神などのヒンドゥー教の神々、王の肖像や歴史的なエピソード、男女の恋愛などさまざまなテーマを、緻密なタッチと鮮やかな色彩で描いた、細密画(さいみつが)とよばれる絵画のジャンルが発達しました。多民族国家であるインドでは、細密画の表現も地域によってさまざまで、それがまた魅力であるともいえます。
これはムガル帝国の第3代皇帝であったアクバルの肖像を描いた細密画です。画面の上にはアクバルの名が記されています。
ムガル帝国は16世紀初めから18世紀初めまでインドを支配した王朝です。アクバル帝は第3代皇帝として1556年から1605年まで在位しました。その間、初代皇帝であった祖父のバーブルが興(おこ)した帝国を発展させ、北インドから西北インドにかけて、広大な帝国を築き上げました。
小さく細長い目は他のアクバルの肖像画にも共通します。また頭の後ろには、丸い形の光背(こうはい)を表しています。光背の輪郭と放射状の輝きを金色で、さらに内側を緑色に塗っています。こうしてあたかも神像や仏像のように光背を描くことで皇帝の権威を象徴しようとしたと考えられます。