三重県宝塚1号墳出土埴輪
みえけんたからづかいちごうふんしゅつどはにわ
概要
宝塚一号墳は、全長111mを測る前方後円墳で、古墳時代中期前葉(5世紀初頭頃)に築造されたと考えられている。船や囲(かこい)、家などの形象埴輪は、主に造り出しと呼ばれる島状の施設やその周囲に置かれていた。
埴輪船は、全長140㎝、高さ94㎝を誇る大形の埴輪で、全体の9割程が遺存する希有な例であり、古墳時代の大形船を写実的に象り、丸木船に舷側板や竪板を組み合わせた準構造船の構造を今に伝える。また、船首・船尾を垂直に屹立させる勇壮な船姿、鰭飾りが付く心葉形の隔壁板、全体を飾る線刻文様など、造形性、装飾性にも優れる。この埴輪船は、船首を古墳に向け、あたかも航海を終えて古墳に辿り着いたような場所から出土しており、船上には王の権威を示す大刀、威杖、蓋を模した別造りの立飾を伴っていることから、古墳に葬られる王の魂を乗せた葬送船とする説も唱えられている。
3点ある埴輪囲と切妻屋根の埴輪家は、それぞれが組になる。そのうち埴輪家1点の床には槽・樋状の、2点の内部には井戸状の表現があり、前者は谷から引いた水を清める導水施設を、後者はその水を汲み取る湧水施設とみられる。これらの埴輪は、板塀などの遮蔽施設に囲まれた祭祀場を模したものと考えられ、古墳時代に各地で行われた水に関わる祭祀を復元するうえで、欠かせない遺例となっている。