船形埴輪
ふながたはにわ
概要
これは船の形をした埴輪(はにわ)。有力者や王の墓である古墳(こふん)を飾った素焼きの土製品(どせいひん)です。本体の左右にはそれぞれ舷側板(げんそくばん)という板状の壁が立てられています。舷側板の船首(せんしゅ)と船尾(せんび)は2本の材を横に渡して固定されています。木をくりぬいただけの簡単なつくりではなく、上部にしっかりとした構造を持っているので、波の穏やかな湾内はもちろん波の荒い外洋(がいよう)まで乗り出す船なのでしょう。
さてこの船、どうやって動かしたと思いますか?帆(ほ)を張るための帆柱(ほばしら)はなく、もちろんエンジンもありませんから、人がオール(櫂・かい)を漕いで進めます。船の縁(へり)に沿って6個ずつ、全部で12個の突起がついていますね。これは、オールで漕ぐための軸(じく)受けです。一人が一本のオールに両手をかけ、後ろ向きで漕ぎます。そのため、進行方向の船首とは反対の方に軸受けが傾斜しています。実際に12人で漕ぐというわけではなく、軸受けが沢山必要なほど大きな船なのだということを象徴的に表しているのかもしれません。一見シンプルに見えますが、単純化しつつも、当時の船の構造がよくわかるように作られているのです。こうした船の形の埴輪は、当時の外洋との交流を示しているとも、葬られた人の魂の旅立ちを表しているとも言われています。