銅鰐口
どうわにぐち
概要
銅鰐口
どうわにぐち
南北朝時代/1360
銅、鋳造。豊かな厚みをもった中型の鰐口。
鼓面は豊かに盛り上がりを付けるが、直線的に厚みを増し、撞座内は平坦に近い。鼓面には内側から二条一組の隆帯を三組めぐらし、最も内側は撞座の外圏となる。最も外側の隆帯は肩に沿ってめぐり、側面にも細く一条めぐるので、三条一組の隆帯を意図したか。特に角の隆帯を太く作ることはない。撞座は無文で、表側に打痕を多数認め、長期間使用されたことが窺える。
目は出が浅く小振りな円形で、唇になだらかにつながる。(一方のみ境目が明瞭)。唇は薄めで角はあまり張らず、端部は少々のバリを残す。耳は片面式。
表裏の鋳型の境目には鋳バリを比較的明瞭に残す。頂部に一文字の湯口痕(長さ4.5㎝、幅0.4㎝)を認める。表側銘区の耳よりやや下に四角形の銅型持ちを左右1カ所ずつ認める(右側「若」の字よりやや上のほうが明瞭に見える。反対側は内面でしか観察できない)。また銘区「延」の字のすぐ上にも銅型持ちを設ける。裏面でしか観察できない。裏面の銘区外より、耳のやや内側に逆円形の鉄型持を認める。また表側鋳型と裏面鋳型の合わせ目に沿って耳より1~2㎝内寄りに小さな略円形の鉄型持を設けている。全体に鋳肌をよく残し、撞座内と内区はやや丁寧にこれを磨り消す。
鼓面表・裏の銘区に刻銘を彫り付ける。
高さ26.3㎝ 幅(目端)27.5㎝ 鼓面径24.5㎝
撞座径(内圏)9.7㎝ 厚11.3㎝ 側面幅7.2㎝
目の出1.4㎝ 耳幅4.4㎝
1口
福井県指定
指定年月日:20200804
宗教法人長源寺
有形文化財(美術工芸品)
本品は刻銘から、南北朝時代、延文五年(1360)に「圓覺寺」なる寺の什物として製作、調進されたものが、後に長源寺に転じて施入されたことが知られる。圓覺寺が何処の寺か特定できず、元の伝来地は詳らかでない。