伏見天皇御集断簡 広沢切「うき世をは」
ふしみてんのうぎょしゅうだんかん ひろさわぎれ うきよをば
概要
伏見天皇(1265-1317)の歌集の断簡。伏見天皇は好学かつ能書として知られる。切名の由来は不明だが、細井広沢に関係するものか。
本品は巻子本が切断されたもので、巻子本で伝存するものは約20本ある。「広沢切」は、楮紙の素紙のほかに、具注暦や書状の紙背を転用しているものがある。不揃いの料紙を用いているのは、執筆が長期にわたったこと、また草稿本であることを示している。所々に本文を同筆で添削しているものも見られ、このことは草稿本であることの証左である。
その書は、素紙に淡墨で速い筆致を示す。流麗で優雅な書風を展開させており、天皇の筆致が確認できるものとして貴重である。なお、本品は書状の紙背を転用したもので、詳細は不明だが、官位に関する3行の文章が記される。