三尊像塼仏
さんぞんぞうせんぶつ
概要
塼仏(せんぶつ)とは、粘土で型を抜き、焼いて作った板状の仏像です。日本には唐、かつての中国から伝来し、近畿地方を中心に、7世紀後半から奈良時代にかけてさかんに作られたとされています。お寺の内部を飾るため、タイルのように壁にはめ込まれていたほか、厨子(ずし)に入れてまつられていたと考えられています。中には釘穴がみられるものや、彩色(さいしき)や金箔のあとが残っているものもあります。お堂の一面を飾る豪華な装飾は、圧巻だったでしょう。
塼仏は、その板状の形の中でも方形と、火頭形(かとうけい)といわれる上部がとがったものとに分けられます。また、表される仏像には、一体だけの独尊(どくそん)、三体が組み合わされた三尊(さんぞん)、小型の仏像が複数並ぶ連坐(れんざ)があります。形や大きさ、文様によって、塼仏を役割に応じて堂内などに配置していたのでしょう。いずれも、薄い衣やふくよかな体など、同時代の唐の仏像様式が反映されています。
塼仏の多くは、今はなくなってしまった廃寺(はいじ)の跡から見つかっているため、長年土に埋まっていたり、火事で焼け焦げたりして、完全な形をとどめていないものがほとんどです。しかし各地の塼仏を比べてみると、同じ型から作ったものや、完成品を粘土に押しつけて作った型からさらにうつしとったものがあることがわかりました。よく似た同士を比較してみるのも、塼仏の楽しみ方の一つです。