蓮華文鬼瓦
概要
飛鳥時代の寺院を飾った二つの鬼瓦です。別々の場所で発見されましたが、とてもよく似ています。鬼瓦というと鬼の姿や顔をイメージすると思いますが、当初は仏教における重要なモチーフの一つである蓮華が表されていました。蓮華の花びらの表し方、花の真ん中部分の大きさは時代や場所ごとに様ざまで、いくつかの系統に分かれます。その中でもこの二つは、同じ型をスタンプのように粘土に押し当てて作ったことが明らかになっています。しかしよく見ると、花の周りの文様が違います。奥山久米寺跡で見つかったものは珠(たま)が連なった連珠文(れんじゅもん)ですが、山村廃寺跡で見つかったものは、鋸(のこぎり)の歯のようにギザギザした鋸歯文(きょしもん)です。山村廃寺を飾った他の瓦に文様をあわせるため、奥山久米寺の型を彫り直し、アレンジを加えて使ったと考えられています。また、瓦の中央に穴をあけて、釘で固定しやすくするための工夫も加わりました。どちらも下の部分の真ん中が大きく、左右が少し小さくアーチ状の形にえぐられています。この形から、屋根の四つの角にあたる棟(むね)の先に置かれたことがわかります。このアーチ状の部分に屋根の棟と半円筒形の軒丸瓦(のきまるがわら)の丸みがフィットするのです。それぞれのお寺の軒丸瓦にも同じ蓮華のモチーフが表されており、全体として統一感をもって仏堂を美しく飾っていたと考えられています。