釈迦三尊十六羅漢像
しゃかさんぞんじゅうろくらかんぞう
概要
画面上部を見てください。釈迦が説法したという霊鷲山(りょうじゅせん)を背景に、中央に釈迦如来、向かって左に象に乗る普賢菩薩(ふげんぼさつ)、右には獅子に乗る文殊菩薩(もんじゅぼさつ)の釈迦三尊像が描かれています。さらに、左右に8人ずつ、計16人の羅漢(らかん)が描かれています。羅漢とは、釈迦が亡くなったあともこの世に長くとどまり、仏法を守って人びとを導くとされた釈迦の弟子のこと。よく見ると、供養者から捧げ物を受けるもの、トラやヤギ、クジャクなど動物と一緒にいるものなど、さまざまな羅漢がいるようです。
さて、画面の一番下に目をやると、羅漢たちとは明らかに雰囲気の違う2人が向かい合わせに描かれています。向かって左が聖徳太子、右が弘法大師(こうぼうだいし)空海です。聖徳太子は、日本に仏教が伝わった頃、その興隆に力を尽くした人です。ここでは、聖徳太子が35歳のときに勝鬘経(しょうまんきょう)というお経の講義をした際の姿を表わしています。太子の周りには美しい蓮華の花びらが舞い散っていますね。
空海は真言密教の開祖。五鈷杵(ごこしょ)という密教の法具を手にして座った姿です。
これらすべてを1枚の画面に描いたこの作品は、釈迦信仰・真言密教・太子信仰を融合させた奈良・西大寺(さいだいじ)の叡尊(えいそん)による、釈迦を慕い、釈迦の教えに回帰しようとした、真言律宗の思想を背景にして制作されたと考えられます。