金剛薩埵像
こんごうさったぞう
概要
金剛薩埵は金剛手菩薩ともいい、大日如来の応化身で普賢菩薩と同体とされ、密教では重要な地位を占める。理趣経曼荼羅のように欲・触・愛・慢の四金剛菩薩を伴って描かれる場合が多く、本画像のように独尊像で描かれることは図像類ほか一、二の例を除いて、概して少ない。白肉身の菩薩は、右手に五鈷杵、左手に五鈷鈴を執り、二重六角框の蓮華座上に坐し、項と背に熾盛の火焔をめぐらした頭光と身光を負う。この形相の金剛薩埵は、釈迦十六善神における釈迦如来の脇侍である文殊と普賢を一具として密教的に描く普賢菩薩(金剛薩埵)と同形であるのが留意される。
描写は、宝冠・瓔珞・釧をはじめ、五鈷杵、五鈷鈴などの金具類は金泥を用いず、裏箔(欠矢)と墨線の描き起こしであらわし、着衣の文様は彩色文様で截金を使用せず、衣紋線は抑揚のある墨線を用い、蓮弁や框座は緑青、群青、朱、丹を塗って墨線でくくり、白を添える。総じて温和な作風を示し、制作時期は鎌倉時代後期とみなされる。
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