紙本淡彩江山夕陽図 性智等十二僧ノ賛アリ
しほんたんさいこうざんせきようず しょうちらじゅうにそうのさんあり
概要
本作品は,山水画に禅僧が漢詩を添えた詩画軸(しがじく)である。江山の隠棲(いんせい)の地を思わせる図様を濃淡の変化を生かした筆墨法(ひつぼくほう)で描いた作品で,図上に性智(しょうち)等の12名の禅僧による著賛(ちゃくさん)がある。性智らは京都五山(きょうとごさん)を代表する文人僧(ぶんじんそう)であり,洛中(らくちゅう)の文人僧を結集させた趣をもつ詩画軸となっている。性智の賛尾(さんび)には,「七十九載大愚叟(ななじゅうきゅうさいだいぐそう)」とあることから,性智の没年から逆算して,本作は永享(えいきょう)9年(1437)頃の制作と推定される。
近景には岩崖に立つ松樹を濃墨で表し,その奥に急峻(きゅうしゅん)な山を背にした水辺の寺や楼屋,橋を配す。中景には水際の家々や数艘(そう)の小舟,遠景には霞(かす)むなだらかな山並みを淡墨で表し,淡く施された彩色によって夕映えの趣となっている。絵は縦長の詩画軸の画面下部に限定された小画面ながら,広闊(こうかつ)な眺望を描きつつ,近・中景には微視的な表現がとられ,人々の営みまでが表されている。
画面右下に「越渓周文(えっけいしゅうぶん)」の朱文方印(しゅぶんほういん)が捺(お)され,周文筆との伝称もあるが,当該印は後捺と考えられている。
本作は制作時期が推定されるもので,室町時代に盛行した詩画軸の代表的な作品として絵画史上に価値が高く,重要文化財にも指定されている。
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