田上の衣生活資料
たなかみのいせいかつしりょう
概要
本件は,琵琶湖の南,滋賀県南西部に位置する大津市田上地域で使用されてきた,紡織用具と衣類について収集した資料群である。
紡織用具と衣類とに大別され,紡織用具は,製糸用具・機用具・整経用具・製織用具,その他,絣の柄見本等々を中心に構成され,製糸から機織りまでの一連の作業工程がわかるよう網羅的に収集されている。これらは,主として木綿素材を扱う用具類であり,いずれも一般農家で使用されてきたものである。なかでも,絣柄には田上絣といい,特に当地で好まれた模様柄があって,志向の一端を垣間見ることができる。
一方,衣類は,それらによって製作した生地をもとに縫製したものが中心で,仕事着や晴れ着,手拭や前掛・手甲・脚絆,そして足袋・下駄,あるいは布団地や風呂敷,端切れにいたるまで,多岐にわたっている。特に,いくつもの当て布を施した使用痕の著しい野良着や布団地,あるいは晴れ着を仕立て直した普段着なども含まれ,新調された着物がやがて転用・改変されて,最後には端切れとなっていくという,布の生涯が理解できる収集となっている。なかでも,田上手拭といって公私の場を問わず,被り物として重用されてきた手拭は当地特有のものであり,京都近郊農村ならではの気風がうかがえる。
(解説は登録当時のものです)