佐賀藩は、福岡藩と隔年交替で寛永19年（1642）から幕末まで長崎警備をつとめた。本図には、画面右端の西泊・戸町両番所から、高島までの範囲が描かれており、佐賀・福岡両藩の合同調練が行われている。西泊・戸町両番所、ならびに内目の一番～三番御台場（一番・太田尾、二番・女神、三番・神崎）には福岡藩、外目の四番～七番御台場（四番・白崎、五番・高鉾、六番・長刀岩、七番・陰ノ尾）には佐賀藩が配置につき、三番御台場・神崎付近で長崎奉行が見守っている。二番御台場・女神と三番御台場・神崎の海峡には、「御當番方張切」として、当番藩の福岡藩による舟橋がつくられている。
承応2年（1653）に築造が始まったこれら七ヵ所台場には、文化5年（1808）におきたフェートン号事件を受けて増築された「新規御台場」も見える。またこれらのほかに佐賀藩独自で設置した「御自分台場」が上ノ嶌（神ノ島）、小鹿倉（小ヶ倉）、中久保などにあるが、佐賀藩10代藩主鍋島直正の嘉永3年（1850）から佐賀藩が築造した台場や、神ノ島と四郎島をつなぐ築切も見えないことから、19世紀前半の状況を描いたものと考えられる。