伊勢遺跡
いせいせき
概要
滋賀県南東部,野洲(やす)川が形成した標高100m程度の扇状地の微高地上に営まれた弥生時代後期を中心とする集落跡。遺跡の広がりは東西約700m,南北約450m,面積約30haに及ぶ。
遺跡の北側と東側では溝が,南側には川の跡があり,集落域を区画したとみられる。集落域の東側では弥生時代後期中葉と考えられる,周囲に焼成(しょうせい)された壁材が施され,床面は貼床(はりゆか)の上に質の良い粘土を貼り,焼き締められたという,国内に例のない大型竪穴建物(たてあなたてもの)が発見されている。後期中葉には大型掘立柱(ほったてばしら)建物3棟(①桁行(けたゆき)4間・梁行(はりゆき)2間,②桁行5間・梁行1間,③桁行3間・梁行1間)がL字状に配置され,さらにそれを区画する柵が確認されている。その周囲からも大型掘立柱建物が弧状(こじょう)に配置された状態で発見されている。後期後葉にも大型掘立柱建物が,弥生時代終末期から古墳時代前期初頭には竪穴建物が確認されている。
伊勢遺跡は弥生時代後期に始まる集落跡で,柵を伴う大型掘立柱建物群は弥生時代から古墳時代への移行期,拠点集落が解体し首長居館(しゅちょうきょかん)の成立する段階における集落の中枢空間の構造を示す貴重な例である。また,近江地域における政治状況を知ることができる点でも重要である。