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上神主・茂原官衙遺跡

かみこうぬし・もばらかんがいせき

概要

上神主・茂原官衙遺跡

かみこうぬし・もばらかんがいせき

史跡 / 関東 / 栃木県

栃木県

宇都宮市茂原町・河内郡上三川町

指定年月日:20030827
管理団体名:

史跡名勝天然記念物

 上神主・茂原官衙遺跡は栃木県のほぼ中央、宇都宮市と上三川町の市町境に所在する古代の官衙遺跡である。この遺跡は古代の人名瓦が多数出土することから、古くから上神主廃寺跡として知られていた。平成7年以降、内容確認を目的とした発掘調査が上三川町と宇都宮市の両教育委員会によって行われ、また、北辺で北関東自動車道建設に伴う発掘調査が行われ、周辺の様相も把握された結果、遺跡は寺院ではなく官衙であることが判明した。
 遺跡は東に田川の氾濫原に面した比高約8mの台地縁辺上、標高80m前後に立地する。その西辺と南辺は幅3から4mの溝により区画されており、北辺は不明ながら、東西約250m、南北約370m以上の広さをもつ。その内部はおおよそ3つの区域に分けられ、中央に政庁域、南に正倉域、北に関連施設域となる。
  政庁域は広場を中心に南面した正殿と東西両脇殿がコの字形の建物配置をもつ。周囲に区画施設はみられない。正殿は1回建て替えられており、桁行5間・梁間3間の南面廂建物から桁行6間・梁間3間の建物にかわる。東西両脇殿はともに桁行10間・梁間2間で、西脇殿のみ建替が認められる。政庁域と正倉域は東西溝と削平されずに残されていた古墳により区画される。正倉域は約50棟の建物が確認されている。中心的建物は、唯一の瓦葺建物である桁行7間・梁間2間の大型総柱礎石建物で、掘込地業の基礎をもつ。建物の周囲は溝で区画されて独立しており、象徴的な存在となっている。この周辺に総柱建物を中心とする建物が配置される。南と西には、桁行3間もしくは4間・梁間3間の総柱建物が整然と並ぶ一方、西端には、比較的小型の建物を含みやや雑然と配置される建物群がある。人名瓦はヘラで刻まれたもので、約1,200点出土している。平瓦・丸瓦ともに人名がみられるものが多く、100名ほどが確認される。8世紀中葉ころのものと推定されている。北辺の関連施設域は政庁域との明確な区画施設はなく、掘立柱建物と平面長方形の特殊な竪穴建物が確認されている。
 この遺跡の南東には東山道と推定される道路遺構が、直径58mの古墳時代中期の大型円墳である浅間神社古墳との間に確認される。この遺構は台地東端では切通しとなり斜面に沿って氾濫原に下っている。このような両者の位置関係からみて、この道路は官衙と一体的に機能していたと考えられる。
 本遺跡は土器や瓦からみて7世紀後葉から9世紀前半にかけて営まれたと考えられる。政庁と正倉という施設の構成からみると、下野国河内郡衙の可能性が考えられる。 ただ、南方約2kmには倉庫群の存在から郡衙正倉の可能性が指摘されている多功遺跡があることや、交通路との関連などから、郡衙関連施設や交通関連施設などを含めた多様な性格を想定することも可能である。このように本遺跡は保存状況も良好であり、豊富な人名瓦などを含めて古代の地方官衙の具体的なあり方を示し、主要な交通路との関係を考える上でも重要であることから、史跡に指定し保護を図ろうとするものである。

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