DIABLE PARTANT POUR LA LUNE(月へ旅立つ鬼)
つきへだびだつおに
概要
菅井はパリに暮らすようになってまもなく、漢字の形を油絵の具で描いた象形文字のような作品がヒットして、一躍パリの人気作家になった。しかし菅井は、そうした人気に満足しなかった。画面の隅々まで100パーセント自分の考えたとおりにしたいと考えていたからだ。目標は月ロケット。当時、月ロケットは最新の技術の象徴、その製造には偶然の入り込む余地はない。菅井も、筆の勢いや絵の具の飛び散りなど、偶然生まれる面白さに頼らないことにした。
この作品には、以前の作品に見られた激しい表現こそ見られないが、静かな画面からは逆に溢れる意志のようなものが感じられる。この絵を見ながら「月に旅立つ鬼」という題名を考えていると、この題名には「それがどんなに困難な目標であっても、未来の美術に向かって出発するんだ」という菅井の言葉が聞こえてきそうな作品だ。