両手のベートーヴェン
りょうてのべーとーべん
概要
両手のベートーヴェン
りょうてのべーとーべん
1888年頃から死の年まで、ブールデルは40数点のベートーヴェン像を造り続けた。初期のものは写実的な肖像であったが、1901年頃から容貌や場面設定などに自由度が増し、ブールデルの自己投影とも思われる表現へ移っていった。感情や表現が堅固かつ壮大な構成感によって凝縮され高められるという点で、二人の芸術には共通性が感じられよう。この作品は、ロダンのもとを離れた年のもので、顔と両手の三つの塊を四角い石柱から掘り出されたように表して、その構成の建築性が顕著である。瞑想的な表情の顔を包み込む背景の大きな量塊は、内面世界の拡がりを感じさせるが、これに対して前方の両手はベートーヴェンの肖像画に見る手に比べてかなり大きく、力強さと豊かな表情をもち、霊感を実際の音や形に移す芸術家の象徴となっている。(M.T.)
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愛知県美術館