若きカフカス人
概要
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若きカフカス人
Young Caucasian
1919(大正8)年
ブロンズ高42.5㎝bronze
第6回院展
彫刻家としての中原悌二郎の活動期間は約10年間であり、現存作品の数も11点といわれる。作者自らの手により破壊され完成に至らなかった作品が何点かあるという記録も残っており、そのような完全主義が彼の作品を少なくしている原因といえるであろう。太平洋画会研究所時代に彼は写真によりロダンの〈考える人〉を知り、その空間的ひろがりに新鮮な驚きを覚えており、それが彫刻家としての彼に大きな影響をもったと考えられる。この作品は、ニンツァというアジアを放浪していたロシア人をモデルとして中村彝のアトリエで制作されたもので、中村が翌年描く〈エロシェンコ氏の像〉とも深いかかわりをもつものといわれる。しかしこの作品のもつ正面性と様式化は、眼窩として穿たれたくぼみの明暗効果にもかかわらず堅固な量塊性を感じさせるものであり、ロダンの作品とはいささか性格を異にするものである。それはむしろ中原自身のロダン解釈であり、結果的にはロダン以降の彫刻との共通性を示すものといえよう。