熊野磨崖仏
附 元宮磨崖仏及び鍋山磨崖仏
くまのまがいぶつつけたりもとみやまがいぶつおよびなべやままがいぶつ
概要
字登尺と称せられる地域にあり、鋸山の山懐中に存する熊野権現社の境内にあたる岩壁に南面して造顕されている。東方に存する仏像は如来仏の像容を示すもので、上半身のみ露呈しているに過ぎないが、現長約6.80mを有し螺髪をいただき相■もまた雄偉森厳の趣を示し、頭上の後背光の上部に三種の梵字曼荼羅が刻されている。西方約12.5m離れて不動明王像あり現長約8.30mを有し、豪毅な彫風を示し、いずれも平安時代の製作とみなされる。
豊後地方は優秀な磨崖仏の多数分布していることによって顯著であるが殊に本仏像の如きは最も雄大なものであり、頭上の曼荼羅もまた他に類例を見ぬ特異なものであり、この種の磨崖仏としてその価値は高い。
鍋山磨崖仏は同市大字上野にあり、不動明王像及び二童子が刻され、元宮磨崖仏大■眞中にあり、天部像三体童子像一体が刻され、いずれもこの地方彫像における一環の関連性をもつものとして価値を有する。