大室山
おおむろやま
概要
大室山は、相模湾の西岸、伊豆半島の付け根の伊東市南部にある火山であり、伊東市の象徴的な存在でもある。大室山を含む伊豆半島の東部には、海域も含め100個もの小型の火山がある。天城連山の一つの遠笠山や大室山の北にある小室山なども火山である。これらの火山は、伊豆東部火山群として気象庁により活火山とされている。これらの火山のほとんどは、単成火山と呼ばれる噴火様式をもち、噴火した後、二度と同じ火口から噴火しない性質をもっており、富士山のように同じ火口から何度も噴火を繰り返す複成火山と区別されている。
伊豆東部火山群の分布は、北西―南東方向に並んでいるようにみえるが、これは伊豆半島をのせて北西方向に進むフィリピン海プレートに押されているためと言われている。強く押される方向に割れ目ができ、そこに地下からマグマが入り込み地表に噴火するため、北西―南東方向に火山が並ぶのである。
単成火山にはいくつかのタイプがあるが、大室山や小室山はスコリア丘と呼ばれ、黒っぽい軽石が噴火の際に降り積もってできた火山である。観光地としても著名な一碧湖はマールと呼ばれる爆発的な噴火でできた火口に、水が溜まって湖になったものである。
伊豆東部火山群の最新の活動は、平成元年7月13日に伊東市沖の海底でのマグマ水蒸気爆発による手石海丘の噴火である。
大室山は、今から凡そ4000年前の噴火で形成された、伊豆東部火山群の中でも最大の大きさをもつスコリア丘で、標高は580メートル、スコリア丘の裾野での直径は1000メートル、火口の直径250メートル、火口の深さ40メートルの円錐形を示す。山体は、整った円錐形を示すが、南側の中腹に小さな噴火末期に形成された小噴火口がみられる。大室山の美しい草地景観は、大室山山焼き保存会により毎年行われる山焼きにより維持されているものである。
大室山はまた信仰の対象となった山でもある。全国2000カ所を数えると言われる浅間神社の多くが此花開耶姫を祭神とするが、「おはち」と呼ばれる山頂の火口の内側には、磐長姫を祀った浅間神社の小さな祠がある。この背後には、噴火の後期に火口を満たしていた溶岩の名残である溶岩の一枚岩が露出している。
噴火の際に山裾から流れ出した溶岩は、3億8000万立方メートルにも達するが、この溶岩の大部分が流出したのは、大室山山頂の火口ではなく、大室山の北側に隣接し、現在シャボテン公園になっている岩室山と南側に接する森山からといわれる。特に東側に流れ出した溶岩流は、当時の地形をならし、伊豆高原をつくり、さらに先端は相模湾に達し、延長5キロメートルに達する城ヶ崎海岸を形成したものである。
大室山は、我が国を代表する自然現象としての火山の、ことに噴火様式の一つである単成火山の典型例として重要であることから、天然記念物に指定し、その保護を図ろうとするものである。