遠野
荒川高原牧場
土淵山口集落
とおの
あらかわこうげんぼくじょう
つちぶちやまぐちしゅうらく
概要
柳田國男(1875-1962)の『遠野物語』には、遠野に生きる人々の生活・生業の実態を示し、特に自然・信仰・風習に関連する独特の文化的景観が描かれている。遠野市の北東部に位置する荒川高原牧場は、『遠野物語』の原点を成す「馬」・「馬産」に関する代表的な景観地で、早池峰山周辺の準平原に広がる牧草地を利用しつつ、地域の基幹産業として継続的に営まれてきた独特の放牧に関する土地利用の在り方を示している。特に、近世及び近現代を通じて、採草のみならず、夏季に山へ家畜を放し、冬季に里の畜舎で育成する「夏山冬里方式」の放牧が採用されてきた点に特徴がある。荒川高原では、中世に採草地としての利用が始まり、近世に南部藩が馬産を奨励したことによって発展を遂げた。特に江戸時代後半には、大型の軍馬生産から輸送運搬に適した小型馬の生産へと転換した。また、荒川高原では、近世以来、馬産と並行して使役牛の飼育も行われていた。昭和41年(1966)に千刈畑牧場・千刈牧場・荒川牧場が統合され、荒川高原牧場が成立した。「遠野」の文化的景観全体の保護に向けた第一段階として、重要文化的景観に選定して保護を図ろうとするもの。