佐世保市黒島の文化的景観
させぼしくろしまのぶんかてきけいかん
概要
九十九島のうち最大の島である黒島は、海岸部の標高50m付近までは急な断崖となっている一方、標高約100m以上はなだらかな地形となっており、畑地や集落が点在する。暖流の対馬海流の影響を受けた海洋性気候であるため亜熱帯植物も多く自生している。江戸時代の黒島は、平戸藩に属する西氏の所領であり、藩の牧場が置かれていた。18世紀に開拓を目的とする移住が平戸藩の主導で行われ、特に牧場廃止後は跡地開拓のためさらに移住が推進された。また、黒島北方に浮かぶ伊島・幸ノ小島は古くから黒島の属島とされ、伊島では牛の放牧、幸ノ小島は藻場として周辺で肥料用の海藻が採取された。黒島は夏季・冬季ともに季節風の影響を強く受ける地域で、特に台風来週時には猛烈な南風に襲われる。そのため居住地はできるだけ風の影響が少ない場所が選ばれ、同時に屋敷及び隣接する畑地等の南側を中心に防風林が発達することとなった。防風林にはスダジイなど自然林を活用したものと、アコウなど意図的に植栽されたものが確認される。特に島南部の蕨集落では、亜熱帯系の植物であるアコウが防風林として海側に植えられており、島に豊富な閃緑岩の石で築かれた石垣の上にアコウの大樹の根が張る、特徴的な景観が展開している。
このように、佐世保黒島の文化的景観は、近世期の牧に起源を持つ畑地やアコウ防風林と石積みによる居住地、属島における生産活動など、独特の土地利用によって形成される価値の高い文化的景観である。