漆案
しつあん
概要
長方形の天板に四本の脚を付けた案(机)で、裏面に桟を打ち付けてこれに脚を取り付けている。脚部は付け根から畳付きまで複雑な多面体に作られ、木工技術が優れていたことがうかがわれる。木胎には厚く下地を施し、天板表と脚には朱漆を塗り、天板裏には黒漆が塗られている。裏面には朱漆書の銘が記され、これによって永元14年(102)に蜀郡(現在の四川省)の匠工■作と知られる。
中国では新石器時代にはすでに漆器を作っていたことが、浙江省余姚県河姆渡遺跡から出土した漆塗りの椀によって知られる。商・周時代から春秋戦国時代にかけて、支配層の木棺に漆を塗ることが流行した。遺跡としては曽侯乙墓から多数の漆器が出土し、当時の貴族たちが漆器に囲まれて生活していた様子が明らかにされた。秦・漢時代になると漆器は地方の中・下級官吏にまで広く普及していったことが、各地の古墓から出土する漆器から推測されている。そしてこの頃までは湖北省がその中心的な産地であった。楽浪遺跡出土と伝える案である。
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