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大内版法華経板木

おおうちばんほけきょうはんぎ

概要

大内版法華経板木

おおうちばんほけきょうはんぎ

歴史資料/書跡・典籍/古文書 / 室町 / 中国・四国 / 山口県

山口県

室町

59枚

山口県文書館 山口県山口市後河原150-1

重文指定年月日:19980630
国宝指定年月日:
登録年月日:

山口県

国宝・重要文化財(美術品)

室町時代、周防・長門の守護大内氏の氏寺であった興隆寺で開版された法華経八巻の板木である。全二八品が完存している。全五九枚のうち、五五枚が文明十四年(一四八二)から、興隆寺塔頭の僧宥淳を願主として開版されたものであり、四枚は元亀三年(一五七二)から天正六年(一五七八)にかけて、同寺心蓮坊重映を願主として補刻されている。
 サクラ材を用い、両面に経文を彫刻するが、うち二枚は片面のみに彫刻されている。版心はなく巻子装とすることを想定している。左右両端に把手を付すが、多くは後補である。版面外に「一之一」から「八之六」までの整理刻記を印刻する。
 当初の刻記には「文明十四壬寅五月日願主宥淳」とあり、開版の時期と願主を明らかにしている。「開版裔薫」「エイクンソウ」という彫師の名がみられ、また「十一月二日ハシマル」「内四日ヒラク」というような彫成の過程をうかがわせる刻記も多くの板木に残されており、興味深い。
 補刻分も「再興願主心蓮房重映」という発願者名の刻記と「作者末松掃部助種貞」「蔵人」「クラント」といった彫師名の刻記がみられる。願主宥淳の名は「興隆寺文書」(山口県文書館所蔵)文明十八年二月十三日多々良亀童丸(大内義興)上宮参詣記に「宝浄坊宥淳」とあり、また補刻分の願主重映については興隆寺旧蔵文書(周防国分寺所蔵)に永禄十三年心蓮坊重映書状があり、いずれも同時代における活動を確認することができる。なお、裔薫、末松種貞、蔵人については、関連の史料を欠く。
 当地では大内氏によって開版事業が行われ、「大内版」として周知のものである。その成果としては『聚分韻略』(刊本は岩国徴古館所蔵)などが伝存しているが、この法華経もそのような動向の一環としてとらえられる。とくにこのように板木が一括して現存する例はほかになく、中世における大内氏領国の文化の水準を示すとともに、地方の出版状況を物語る全国的にも数少ない資料として貴重である。
 なお、本板木は大正四年(一九一五)に当時の山口図書館の所蔵に帰したが、その後山口県文書館に移管され、現在に至っている。

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