鶴林寺太子堂
かくりんじたいしどう
概要
鶴林寺太子堂 一棟
鶴林寺は聖徳太子の開基と伝える。太子堂については、大正七年の修理時に発見された屋根板の墨書(文面から建武元年(一三三四)に記されたものと考えられる)によれば、この堂は太子草創以後、天永三年(一一一二)に修理があったといい、様式上も平安時代後期とみられるから、この時建立されたものと考えられる。桁行、梁間とも三間、宝形造の母屋の前面に一間通りの庇をつけ、屋根を葺きおろしにした堂である。前面の庇は面取方柱、舟肘木をなし、母屋と繋虹梁で結ばれている。母屋は円柱、組物は大斗肘木で、内部は中央に四天柱を立てて内陣とし、来迎壁を設けて、仏壇を置き、外陣周囲の小壁には千体仏を描いている。なお天井は小組格天井を張っているが、もとは外陣が化粧屋根裏であって、四天柱上には旧組物を残している。総じて高さの低い立面、軽快な屋根など、形態は優美で、平安時代後期の仏堂の特徴をよく示している。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)