寒山拾得図
概要
曾我蕭白といえば円山応挙、池大雅、伊藤若沖らとともに、十八世紀なかばに京都で活躍した創造性に満ちた画家のひとりである。
彼はどのような機縁があってのことかはわからないが、伊勢地方に何度か足を運び、大量の作品と、さまざまな逸話を残していった。彼の奇矯な行動と風変わりな作品は、ようやく個性というものを全面に打ち出すようになったこの世紀の画家たちのなかでも、ひときわ抜きんでていた。
彼の発散する強烈な個性には、鼻をつまむ人もあったが、また一方で引き寄せられる人も現れた。田中岷江(みんこう)は、そのひとりである。
彼は、もともと津藩に仕える小身の家臣であったが、根付の作家として当時から広くその名を知られていた。
ここに挙げた作品は、岷江の“蕭白酔い”を示す一例である。精神のたががはずれたような奇妙な顔、荒々しい筆さばき、どれも蕭白の奇矯な作風を追随するものである。 (山口泰弘)