照りつつ降る日
てりつつふるひ
概要
《照りつつ降る日》という一風変わった題名は、萬自身が付けたものである。陽光が射しているのに雨が降るという微妙な天候状態は、俗に「きつねの嫁入り」などと言われ、神秘的な雰囲気を醸し出す。作者はその場面に遭遇し、光と水の織りなす独特の光景に思わず絵筆を執ったに違いない。 この画家は若い頃から、澄み切った晴天よりも、雨や曇りといった気象の下に展開する風景を好んだようである。彼の作品とりわけ水彩画、水墨画のなかにこうしたキーワードでくくられるものが多く見かけられる。 この作品は、萬が創設に関与した春陽会の第2回展への出品作で、水彩でありながらも、油彩画のような迫力を感じさせる。単純で的確な形態の把握、リズミカルな筆致、深い印象を与える色遣いに、水彩画家としての萬の本領をみることができよう。