水着姿
みずぎすがた
概要
萬が生涯を通じて赤と緑の色彩対比を好んで用いたことは良く知られている。ここで少女が着ている水着も、緑と朱の取り合わせが鮮やかな、彼好みのものである。萬自身が東京や横浜まで出かけて、この水着を探し求めたといわれる。本図の着想は、大正2年の第2回フュウザン会展に出品された《日傘の裸婦》(神奈川県立近代美術館蔵)の再来を思わせる。室内で洋傘をさした日本髪の裸婦を、茅ヶ崎海岸の青空の下、和傘を持った断髪のモダンガールへと見事に転換させている。萬らしい機知を感じさせる作品とも言えるだろう。晩年の萬は日本的な油絵を模索し、この作品においても人体の平面的な捉え方、波頭の表現に見える装飾性、明快な色遣いなど新たな展開の可能性を予想させるが、昭和2年の第5回春陽会展に展覧されている最中の5月1日、萬は帰らぬ人となった。