加賀藩士 上木家文書
かがはんし うえきけもんじょ
概要
上木家は越前府中(現在の福井県越前市)の出身で、関ヶ原の戦いでは前田利長に仕え、その後、知行千石を有する加賀藩士家となり、普請奉行など各奉行を務めた。また、加賀藩祖・前田利家の側室で、三代利常の生母である千世(寿福院)の実父である上木新兵衛に連なると考えられる。
本文書は、上木家に伝来する354点の資料からなっており、戦国時代末期から大正時代のものが含まれている。加賀藩士家の基本的な文書である「知行宛行状」、「先祖由緒一類附帳」、「系図帳」などが揃っているほか、縁組や勤仕に関する資料、香道を含む学芸の資料も含まれている。藩政の実務を担った藩士家の詳細が伺え、加賀藩の職制や武家社会の様相、社会生活を研究するうえで格好の資料であり、学術的価値が高い。
また、利常から上木家に宛てた「かな書状」や二代藩主・利長の書状、「豊臣秀吉朱印状」、18世紀末から19世紀初頭にかけての上木家屋敷図など、類例が少ない資料が含まれており貴重である。
「辰巳上水江筋之絵図」は、幅15.0㎝、長さ708.0㎝の細い和紙を貼り継いだ絵図で、取水口から兼六園までが描かれている。図中には貼り込みなどが随所に行われ、寛政地震(寛政11年=1799年)前後の様子が書き入れられており、現認される絵巻の中で最も古い情報を持つものとみられ、辰巳用水研究に役立つと考えられる。
本資料は加賀藩士で知行千石を有し、藩政の実務に携わった家の文書であり、また、藩主生母の実家関連の資料という点で価値が高く、有形文化財として指定し、その保存を図ることが必要である。