短刀 無銘
たんとう むめい
概要
おそらく造。表裏ともに掻き流しの腰樋と添樋。鍛は板目やや流れ、刃文は互の目に小沸つき、匂口ややうるむ。茎は栗尻、化粧鑢仕立ての生茎で、鎬上に目釘孔1つ開く。付属の拵には「和泉守兼重」の銘を切った小柄を伴う。本品の本歌は、室町時代後期・16世紀に駿河島田派の刀工助宗が打った「短刀 銘助宗(おそらく助宗)」(個人蔵)で、刀身に「おそらく」の字句が刻まれていることからこの名がある。横手筋が刀身の中程まで下がり刀身の半分以上が鋒となる反り深い体配が極めて特徴的で、安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍した京都の刀工・白銀師の埋忠重長(寿斎)が自家に来た刀剣を絵図にまとめた『埋忠銘鑑』に収載され、のちにそれが数多く筆写されたことで衆目を集め、各地の刀工がその写しを制作した。本品はその一例である。