アケボノゾウ化石多賀標本
あけぼのぞうかせきたがひょうほん
概要
アケボノゾウ(学名:Stegodon aurorae)は、約250万~100万年前の日本列島に生息していたステゴドン科ステゴドン属のゾウ類である。アケボノゾウの祖先は、約530万年前に陸橋(りくきょう)を通じて日本列島に渡来したと考えられており、アケボノゾウは、自然環境に適応して独自の進化を遂げ小型化した日本(にほん)固有(こゆう)種(しゅ)である。
アケボノゾウ化石多賀標本は、工業団地の造成工事中に約180万年前の地層(古琵琶(こびわ)湖層群(こそうぐん))から発見された。全身の骨の約7割に相当する134点が産出し、部位が特定されていないもの51点を含めると185点に上る。体(たい)肢(し)骨(こつ)の多さは国内で発見されたゾウ化石の中では群を抜いて多い。特に右前(ぜん)肢(し)末(まっ)脚(きゃく)は指(し)骨(こつ)や種子(しゅし)骨(こつ)まで関節した状態で産出し、世界的にも稀な例であり、国内で唯一である。
アケボノゾウ化石多賀標本は、今後の調査研究により、小型化に関連した運動機能の特性や行動(こうどう)生態(せいたい)などの適応進化に関する、より精度の高い知見が得られることが期待される。さらに、島嶼(とうしょ)である日本列島の古環境(こかんきょう)の変化に適応したアケボノゾウ独自の進化史を解明できる可能性があり、研究をする上で不可欠な標本として学術価値が極めて高い。