扇面散蒔絵櫛
せんめんちらしまきえくし
概要
桐製、政子形、丸棟の挿櫛である。政子形の櫛は、安永頃に江戸の南伝馬町3丁目鼈甲職・駿河屋六左衛門が鶴岡八幡宮の什宝「菊籬蒔絵螺鈿手箱」(政子の手箱)の内に納められる櫛の形に倣って作り始めたとされる。桐木地を木地溜塗とし、扇の地紙を高蒔絵で表す。扇には、酒井抱一の萩、片輪車、車、日出に枯木烏、光琳菊、撫子、山東京伝の狂歌「山東の嵐の後の破れ傘」、海松に貝を表す。裏に「一抱」の蒔絵銘と朱漆で「抱」の円形印を表している。柳澤一抱(?~1834)は近代東京の蒔絵師。帝室技芸員・白山松哉(1853~1923)の下職をを長年務め、その没後に一抱を号して、皇室御用品や三菱・岩崎家の注文品を製作した。花柳章太郎(1894~1965)の旧蔵品で平成15年(2003)に遺族の青山久仁子氏より国立劇場へ寄贈された。