聯珠争光図
れんじゅそうこうず
概要
聯珠争光図
れんじゅそうこうず
宋紫石筆 (1715-1786)
そうしせき
江戸時代、明和2年/1765年
絹本著色
112.8×43.5
1幅
落款:「聯珠争光/乙酉季冬 宋紫石寫」
印章:「霞亭」(朱文龍飾方印)「紫石之印」(白文方印)「石耕」(遊印、白文長方印)
来歴:1975神戸市立南蛮美術館→1982神戸市立博物館
参考文献:
・神戸市立博物館『まじわる文化 つなぐ歴史 むすぶ美―神戸市立博物館名品撰―』図録 2019
・國立故宮博物院特別展『交融之美 神戸市立博物館精品展』図録 2019
・神戸市立博物館特別展『日本絵画のひみつ』図録 2011
・勝盛典子・朽津信明「近世日本におけるプルシアンブルーの需要-秋田蘭画を中心に―」(『神戸市立博物館研究紀要』第26号) 2010
・神戸市立博物館特別展『コレクションの精華』図録 2008
・千葉市美術館『江戸の異国趣味―南蘋風大流行』展図録 2001
宋紫石(1715-86)は江戸の人で、長崎にて熊斐から南蘋風花鳥画を学び、宝暦8年(1758)長崎に来た清人画家・宋紫岩(?-1760)に学びました。その画名は、師・宋紫岩にちなむものです。重厚な南蘋画を咀嚼し、瀟洒な表現へ変容させた宋紫石には、宋紫山、土方稲嶺、蠣崎波響、司馬江漢など、多くの画家が師事しました。『ヨンストン動物図譜』の動物を用いるなど、江戸における洋風表現のキーパーソンでもあります。
南天には一羽の白頭翁がとまり、赤い実を咥えており、下方では庚申薔薇が淡く美しい花を咲かせています。塗り残しで表現した雪は、細かく筆を落とすことで墨の微妙な諧調を付け、雪の量感のみでなく、降り注ぐ(あるいは風を受けて枝からひらひらと舞い落ちた)さまをも描き出しています。冬の月明かりに反射する雪の白さは、宋紫石ならではの趣向といえるでしょう。南天は「天竹」とも称され、「竹」は「祝」と音通します。多数の実は多子多産を、白頭翁は長寿を示唆するものです。庚申薔薇は年中花を咲かせる「長春花」とも賞されますである。吉祥モチーフを組み合わせ、長寿多子繁栄の永続を込めつつも、瀟洒な作品に仕上げた点は宋紫石の卓越した表現といえます。「聯珠争光」の題は、南天の実が月光を反射する美しさを詠む一方で、漢詩を競う意も重ねられていると考えられます。
【長崎ゆかりの近世絵画】