雪梅図
せつばいず
概要
S字状に曲がり、白雪の積もる梅樹。雪は背景に淡墨を刷いた塗り残しで表しています。月夜の光を雪が反射する美しさを、光沢のある絖に描き出す趣向は秀逸です。特徴的な梅樹の曲線は優美な枝振りを表現するとともに、画面中央に落款、印章を入れるためでもありました。中央の広い余白に落款、印章を堂々と入れることで均整のとれた構図になり、長崎出身の鶴亭が描いたことを強く主張しています。右上の積雪した枝には、林和靖が詠んだ梅の名句「暗香浮動月黄昏」にちなむ遊印(白文長方印)を捺しています。絵、落款、印章、材質もあわせた総合的な作品として鑑賞すれば、鶴亭が込めた憧れの「暗香」を感じ取れることでしょう。その趣向を理解、共感してくれる人、友がいたことをうかがわせます。唐の香りを込めた、近世墨梅図の名品。
【長崎ゆかりの近世絵画】